ちょっと耳慣れない言葉「コングロマリット・ディスカウント」。
もしかしたらはじめて耳にする方もいるかもしれません。
昨今は事業ポートフォリオの「選択と集中」を追及する会社が増えている一方で、垂直統合や水平統合を加速させて多角化を図る企業もあります。
多角化自体は、事業の季節性であったり固有のリスクを分散するという意味で、必ずしも悪いこととは言い切れません。
しかし、多角化を進めることで顕在化するデメリットについても、株主なら正確に理解しておくことは肝要です。
本稿では主に株式市場における多角化のデメリットについて、コングロマリット・ディスカウントにスポットライトを当てながら解説したいと思います。
コングロマリットディスカウントとは
コングロマリット・ディスカウントをご存知でしょうか?
— バフェット・コード (@buffett_code) 2018年4月15日
相互に関係の薄い事業を多数抱えていることが原因で、本来の事業価値の総和よりも割安に評価されてしまうことです。
例えばサッポロやTBSは利益でみると不動産業が主業のような状況です。
ソニーはスマホやゲーム以上に金融で儲けています。 pic.twitter.com/KdQUm4ne9l
注意したいのは、事業を多く抱えているからといって、コングロマリット・ディスカウントが発生するわけではないということです。
ツイートの例にもあるように、まったく本業と関係ない事業を持っていると発生するのです。
なぜビール会社が不動産業やるの?
なぜテレビ局が不動産業やるの?
なぜ食品会社がプロ野球球団持ってるの?
なぜ通信キャリアが巨大ファンド持ってるの?(球団も!)
などなど
ディスカウントを受ける理由としては主に下記のようなものがあります。
理由として、
— バフェット・コード (@buffett_code) 2018年4月15日
①すべての事業に精通して投資判断できる投資家はいないから
②多角化でリスク分散する銘柄を買うくらいなら、投資家自身で専業の企業に分散投資するから
③多角化によってリソースが分散するため、専業の企業に比べて競争優位を持てていないケースが多いから
などが挙げられます。
①と②が特に重要です。
①はつまり、ビール製造業のバリュエーションと不動産業のバリュエーションの両方に知見がある人ってほとんどいないよねってことです。
②は、「俺はキャリアの将来性を評価して投資したんだ!なのに手当たり次第に投資するファンド業なんてやめてくれよ。どの会社・どの業界に投資するかはおれ自身で決めるから、キャリア業だけやっていっておくれよ泣」ということです。
投資銀行ではコングロマリットの企業価値をこう算出する
市場評価ではディスカウントを受けている可能性が高いコングロマリット。
では実務上、理論価値を評価するのってどうやっているのか、気になりますよね。
そこで登場するのがサム オブ ザパーツという評価手法です。
投資銀行では、こうしたコングロマリットを企業価値評価する場合はSOTP(Sum Of The Parts)を使います。
— バフェット・コード (@buffett_code) 2018年4月15日
手順は、
①各事業をそれぞれ取り出して対応する類似企業を選ぶ
②各事業の利益に類似企業のマルチプルをかけて事業価値を算出する
③②で算出したすべての事業の事業価値を合算する
です。
要は、事業それぞれを事業価値評価して、最後に合算すれば良いんじゃね?っていうことですね。理屈はシンプル!
ただ、投資銀行においてシニアバンカーからSOTPの分析を依頼されたジュニアバンカーは内心とても苦々しい気持ちになります。
なぜならば...
余談ですが、SOTPは事業めちゃくちゃ持ってる日立製作所なんかだとすっごく大変なんですよね orz
— バフェット・コード (@buffett_code) 2018年4月15日
セグメントが10個くらいあるんじゃないかな。
各セグメントで類似企業を選定して、マルチプルを計算して、事業価値を出さなきゃいけませんから、ジュニアバンカーは徹夜必至です。
と、いうことです笑
(慣れれば徹夜なんてことにはなりませんが)
サッポロHDなどは事業数もそこそこに、競合も数社で明確なので分析しやすいです。
気が向いたらSOTP分析をやってみると、とても勉強になって良いかもしれませんよ。