「株式投資はやっているけれど、財務数値は売上と純利益しか見ない」という声をたびたび耳にします。
他にも「会計の本は読んだことがあるけれど、結局仕事で使えるような生きた勉強にはならなかった」といった声も。
財務・会計が難しいのもよくわかりますが、やはりそれだとかなり危うく感じてしまいます💧
ということで、今回は損益計算書のポイントを押さえた見方を解説したいと思います。❗️
各科目をどういう風に捉えたらよいのか売上から順に説明していきますね😆
なお、本稿は私がtwitterで投稿したものを加筆修正して、再編集したものです。
140文字では伝えきれない部分が多く、泣く泣く削らざるを得なかった箇所を復活させています。
より深くお伝えできればと思っています。
- 株式会社は利益の最大化を目指す
- 1. 売上高
- 2. 粗利(売上総利益)
- 3. 販管費(販売費および一般管理費)
- 4. 営業利益
- 5. 支払利息
- 6. 税引前利益
- 7. 純利益
- 8. EPS(一株あたり純利益)
- まとめ
株式会社は利益の最大化を目指す
株式会社の至上命題ってわかります??
そう、「株主価値の最大化」です。
株主価値の詳細な定義についてはここでは触れませんが要は、
①その会社が将来獲得するであろう現金を合計した金額
から
②銀行や投資家に返済する金額(有利子負債)
を引いたものです。
大事なのは①で、株主価値を高めたければ利益を着実に上げなければならないわけです。
ということで、P/Lで一番重要なのは利益ということになります。
企業は株主価値の最大化のために利益の最大化を目指します🧐
で、じゃぁどうすれば利益が増えるかというと簡単で、
売上ー費用=利益
を考えます。
すなわち利益を増やすためには、
- 売上を上げる
- 費用を抑えるの
の二択になるわけです。
まずはここをきちんと押さえておきましょうね。
1. 売上高
売上はもっとも分かりやすい戦闘力を表します👊
売上順で業界での序列が決まることもありますし、売上が伸びていないと「あぁ、もうオワコンなのかな」なんて風に思われてしまうからです。
また、先ほどの式を思い出していただくと、売上が伸びないケースではコスト削減でしか利益を増やせませんでした。
これだと打ち手が一気に減ってしまいますね。
売上を見るときの留意点
売上を見るときは以下の点に注意したいところです。
多額の売上が計上されているからといって利益をあげているとは限らない
売上が大きくてもそれと同じくらい費用も多ければ利益なんて出ないわけです。
さすがに「そんなことわかってるよ」と思われるかもしれませんが、10年ほど前まではリテラシーのある人も少なくて売上至上主義という時代が日本にもあったのですよ...
グロス(総額)表記かネット(純額)表記か
売上って、定義次第でけっこう値の変わるガバガバな科目です。
たとえばEコマース企業だと、流通総額(取扱高)を売上に計上するところもあれば、あくまで手数料部分を売上とするところもあります。
当然前者の方は売上がめちゃくちゃ大きな数字になる一方で、利益率が低くなるわけです。
複数の企業で比較するときは売上の基準を合わせて比較しましょうね😄
2. 粗利(売上総利益)
粗利は売上から売上原価を引いたものです。
原価に入るのは材料費や製造に加わった人の人件費など。
粗利は商品力やサービス力を測るための利益です。
商品に競争力があれば粗利率は高い✨
逆に、どこでも買える商品だと粗利率が低いです🤮
-
粗利高い:医薬、化粧品:70~90%
-
粗利低い:量販店:20%ほど
粗利率が高いメリット
粗利が高いと何が良いのでしょうか。
一言で言うと「打ち手が増える」ということ。
ここが十分に確保されていたら広告宣伝にお金を投じたり、クレーム対応のためにカスタマーサポートを手厚くしたり、売上を増やすために営業マンを増やしたりできるのです。
その他にも、
- 厳しい在庫管理が不要
- 品切れにならないように少し余裕を持って在庫を持っておける
- 売上債権の回収に躍起にならなくても大丈夫
などがあります。
粗利率が高いということは原価率が低いということ。
原価が小さいので多少売れ残っても痛くありません。
品切れになって機会損失になることの方が怖いので、在庫に少しゆとりを持っていられるということ。
また売掛金の回収が多少うまくいかないときがあっても、原価部分が小さいのでそこまで大きく困ることもありません。
逆に、粗利がカツカツの数字だとやりたいことがあってもなかなか出来ないですし、在庫や売上金の回収がシビアになってきます。
バフェットは、この粗利率が一貫して高い(具体的には40%以上)企業は競争優位性を持っていると判断します。
【バフェットによって永続的優位性が確認された企業の粗利率】
— バフェット・コード (@buffett_code) November 7, 2018
コカ・コーラは一貫して60%以上の粗利益率を保っている。ムーディーズは73%、バーリントン・ノーザン・サンタフェ鉄道は61%、リグリーは51%だ。
※粗利率が60%以上の会社一覧https://t.co/HAOxUYbhpA#バフェットの財務諸表を読む力
3. 販管費(販売費および一般管理費)
販管費で大きな科目は広告宣伝費と研究開発費です。
これらはブランド構築や新製品開発など将来の競争力を獲得するための費用ですね。
研究開発費が大きい企業は、毎年莫大な費用が必要ということだけでなく、常に新製品を出し続けなければすぐに競争力が陳腐化してしまう宿命にあるということ🤢
これはけっこう辛いですね。
製薬や自動車なんかはまさにこれで、テクノロジーの進展が目覚ましい業界だとキャッチアップするだけでなく、技術的に他社より優位でないと儲けることが難しくなります。
しかし研究開発をしたからといって必ず成果が出るとも限らないので、莫大な資金を投じた結果なにも生み出せなかったということも珍しくありません。
ところでバフェットは、毎期研究開発に莫大な資金が必要な会社には投資をしないスタイルを貫いてきました。
彼は清涼飲料や家具、アイスクリーム、損害保険などのように研究開発の必要ない企業に好んで投資をしています。
バフェットの長年のお気に入りであるムーディーズは、研究開発費を支出する必要がなく、SGA費も粗利益のわずか25%だ。
— バフェット・コード (@buffett_code) June 9, 2018
またコカ・コーラも研究開発費はゼロだ。もちろん途方もない量の広告を打つ必要があるが、それでも平均すると59%にすぎない。#バフェットの財務諸表を読む力 #投資
研究開発のほかにも、販売手数料や販売促進費などのモノを売るためのコストが販管費には含まれます。
これは商品を売ってもらうための手数料や、売るための値引きなどですね。
さらにそのほか、役員報酬や管理部門の人件費なども販管費に含まれます。
もちろん、販管費は一貫して低ければ低いほうが良いです。
4. 営業利益
営業利益は粗利から販管費をのぞいた利益です。
粗利率が商品力を表すとしたら、営業利益率は「ビジネスモデルの競争力」を表します(ここめっちゃ大事)。
ビジネスモデルとは、
- 商品を製造し
- 消費者に買うよう説得し
- 消費者のもとに届けて
- 使ってもらって満足してもらう
までの一連のプロセスを指しています。
営業利益率は、この一連の中でどれだけユーザーに刺さっているか(この事業がなければユーザーがどれだけ困るか) を表すということですね。
5. 支払利息
支払利息は金利の支払いコストのことです。
支払利息が大きいということはどういうことでしょう?
たくさん銀行や投資家から借り入れをしているということですね。
毎期支払利息が大きいということは、巨額の借り入れが必要ということ。
つまり、支払利息が一貫して大きい企業は巨額の設備投資が必要な企業である可能性が高いのです🤔
バフェットは支払利息をどうみているのでしょうか。
彼は毎年巨額の設備投資を必要とする企業には見向きもしません。
実際、バフェット銘柄では支払利息がほとんどないか極めて低いケースが多いです。
永続的競争優位性を持つ企業はの大多数は支払利息をほとんど計上していない。
— バフェット・コード (@buffett_code) October 4, 2018
たとえば永続的競争優位性を持つP&Gの支払利息は、営業利益のわずか8%。リグリーは約7%だ。
対照的に資本集約型で競争の激しいグッドイヤーは平均49%も支払っている。#バフェットの財務諸表を読む力 #投資
6. 税引前利益
税引前利益は、営業利益から①本業以外の損益と②臨時の損益を引いた利益です。
それぞれ見てみましょう。
①金利の譲受など「ビジネスモデルの外(※)」で起こる損益
②自社ビルを売ったり、買収した会社が減損するときの臨時に発生した損益
実は、バフェットは税引前利益を重視します。
それは、税金の水準が国によって違うので国際比較をしやすくするためです。
例えば米国は法人税が日本より結構安いです。
またタックスヘイブンと呼ばれる国では法人税がゼロに近く、世界中の企業が本社をタックスヘイブンに置いたりしていて社会問題となっています。
そんなこんなで、どの国で事業をしているかで企業の強さはそうそう変わらないのに税金の影響が大きいものですから、いっそ税金が引かれる前の数字で比べようよ、というのがバフェットの趣旨です。
7. 純利益
純利益は税引前利益から法人税を除いた最終利益のことです。
最終的な企業の戦闘力を表します👊
この純利益率が高いほど、ビジネスモデルの中、外、税金面などあらゆるポイントで利益を上げる工夫がなされているということを意味します。
バフェット的には、具体的には20%以上だと競争優位性があると判断しているようです。
彼はさらにこの純利益が一貫して右肩上がりであるかを重要視しています。
優良企業の純利益の比率は例えばコカ・コーラで21%、ムーディーズでなんと31%にのぼる。
— バフェット・コード (@buffett_code) November 25, 2018
一方サウスウエスト航空は7%で、航空産業の厳しい競争体質と、誰も長期的経済優位性を持ちえない業界の実情を反映している。
※純利益率20%以上の会社https://t.co/v6y1cPBahf#バフェットの財務諸表を読む力
8. EPS(一株あたり純利益)
純利益を株数で割ったものをEPSと呼び、EPSが一貫して右肩上がりか確認しましょう🧐
なぜ一株あたり利益のトレンドを見るのか?
純利益のトレンドじゃダメなのか?
そういう疑問が挙がると思いますが、ダメなのです。
投資家が気にすべきは純利益よりも1株あたりの純利益です。
なぜなら投資家は、今あなたが持っている株数にどれだけ利益が還元されるのかが重要だからです。
自社株買いや増資をすると株数が変動しますよね。
そうすると純利益のトレンドとは一致しないようになります。
利益が増えなくても、自社株買いをすると市場に出回っている株数が減ります。
そうするとあなたが持っている1株に還元される利益は大きくなりますよね。
純利益のトレンドだけ見ているとここを見誤ります。
一貫してEPSが高い企業は、競争優位があるというだけでなく、自社株買いなどの株主還元に積極的な可能性も高いです✨
まとめ
P/Lの見方の基礎の基礎、いかがでしたか?
財務諸表を毛嫌いするのではなく、簡単で良いので少しずつ理解を深めて行ってほしいと思います。
そして企業分析をする際は是非こうした点をチェックしてほしいですね。
そのときはバフェット・コードをよろしくです笑
なお、財務・会計系の本も良いのですが、「バフェットの財務諸表を読む力」がめちゃくちゃオススメですよ。
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