スクリーニングを制するものはバリュー投資を制す
そう言っても過言ではありません。
私たちをリッチにしてくれる銘柄はスクリーニングが教えてくれます。
- でもどうやって企業を絞れば良いかわからない
- 10年後に化ける企業、たとえばかつてのソフトバンクやスタートトゥデイを探す方法を知りたい
そういう方は多いはず。
どの銘柄を買えばテンバガーになるかは言えませんが、どうやって探していけば見つけられるかはある程度説明が出来ます。
- 手当たり次第に思いついたアイデアで銘柄をスクリーニングしている
- 朝から晩まで何十~何百社分も四季報を読んでいる
- 1社調べていたら、その隣の企業が目に入って気になって調べ始めてしまう
ということに思い当たる方は、(決して悪いことではありませんが)もしかしたら効率的に作業ができていない可能性があります。
ということで、どのようにして銘柄選択をすれば良いのかわからないという方に向けて、投資銀行仕込みのスクリーニングのやり方をご紹介します。
銘柄選定の手順をざっくりと
まず最初に全体の流れについてざっくりとお伝えしますと、
- 定量的なスクリーニングで対象を100社程度に絞る(ロングリストと呼びます)
- 業種や事業概要といった定性的なスクリーニングで対象を10~20社程度に絞る(ショートリストと呼びます)
- ショートリストのものから割安に放置されているピカイチのものを3社に絞る(アタックリストと呼びます)
と、こんなイメージです。
まず最初に声を大にして伝えたいことがあります。
スクリーニングにおいて、よく定量的な判断と定性的な判断をいっしょにやってしまっている方を見ますが、これは良くないということ。
選定に一番時間がかかるのは定性的な判断をするところです。
ですので、先に定量的なスクリーニングで対象をある程度絞り込むことが効率化への第一歩なのです。
ロングリストの作成
ではさっそくロングリストを作ってみましょう。
まず、あなたがピカイチの銘柄にもとめる定量的な指標を考えてみます。
ここではバフェット銘柄を想定して、たとえば下記の指標を設定してみることにします。
収益性
- 売上総利益率
- 営業利益率
- ROE
財務健全性
- ネットD純利益倍率
割安感
- PER
指標を決めたら、今度はその値を決めたいと思います。
ポイントは検索結果を絞りすぎず、広げすぎないあたりに落ち着けることです。
許容できる最低限度の数字は守りつつ、検索条件と検索結果を行き来しながら定めていきます。
ためしにバフェット・コードの左ナビから条件検索で下記のように設定して検索してみました。
結果はこちらです。
17件しかHitしなかったので、どうやら条件が厳しすぎたようです。
ある程度幅広く銘柄を探しつつ、時間をかけすぎないラインとして、だいたい100社程度が引っかかる条件にするのが目安でしょうか。
少し微調整して、こちらで再検索すると...
このような結果に落ち着きました。
企業数は70社程度と少なめですが、及第点とします。
また会社名や指標をざっと見ても悪くない会社が並んでいるように見えますので、ロングリストとして合格としました。
ちなみに、スクリーニング結果の企業の並び順は売上高の大きい順になっています。
■バフェット・コードへはこちら
ショートリストの作成
では上記のロングリストをさらに絞り込んでいきましょう。
いわゆるショートリストの作成です。
ロングリストが少なめなので、ここでは5~15社程度に絞りたいと思います。
判断基準は主に定性的なものです。
ポイントは、確認する箇所に優先順位をつけることです。
ロングリストで70社程度に絞り込んだといっても、まだ70社もあります。
ひとつひとつ事業内容などを見ていたら日が暮れてしまいます。
今回はこちらの項目を見ていきたいと思います。(優先順)
- 業界
- 過去の業績は上昇トレンドか
- ビジネスモデル
- 商品・サービスの競争力
- 業界内での順位
これらを確認するために、会社名のリンクを押して個別銘柄ページに飛びます。
では実際にロングリストの上から順に見てみます。
まずはNTTドコモですね。
最初にチェックすべきは業界から。
なぜなら、儲かる企業かどうかは初期的に業界でざっくり判断できるからです。
また、自分の理解を超えた業界は選ぶべきではないから、という理由もあります。
知見の浅い分野への投資は、最後まで信念をもって保有することができないためです。
たとえばバフェットは、IT業界は自分の理解を超えているという理由で、長らく(ITバブルの頃でさえ!)GoogleやFacebookなどのIT銘柄には投資をしませんでした。
では確認をしていきましょう。
ページ左上の株価の下あたりを見ていただくと、決算月と業界が掲載されています。
ドコモといえば業種的には「通信業」で、インフラの敷設に莫大な資金が必要です。
すでに国内の全域をカバーし終えているNTTドコモは、まさにバフェットの言う「堀の深い事業」を持つ企業、すなわち参入障壁の大きい企業と言えます。
ということで合格としました。
次に業績のトレンドを見てみましょう。
売上しかり利益しかり、長期で見るとやや浮き沈みが見られます。
ですが少なくとも過去3年間プラス来期予想では右肩上がりとなっています。
そしてEPS、BPS、配当も3年間は右肩上がりです。
収益性も順調に改善されていますし、ネットデットもマイナスで健全です。
ということで、短期ではありますが業績トレンドも一応合格とします。
ここまでを10秒~30秒を目安に確認したいところです。
時間を意識することがスクリーニングの鉄則です。
続いてビジネスモデルと商品・サービスを一緒に見ていきます。
「ドコモのビジネスはキャリアでしょ」って話ですが、派生事業をたくさんやっているので、おさらいのために業績グラフの直下の事業内容を見てみましょう。
事業セグメントは①通信事業のほか、②スマートライフ事業と③その他事業を営んでいます。
スマートライフ事業には「タワーレコード」や「らでぃっしゅぼーや」が含まれるようです。
さてこれ以上の深入りはしません。今はこの程度で大丈夫です。
少なくとも通信事業は、今やスマホがないと生活に著しい影響が出るほどインフラとなっており、そのキャリアが(今は)3社しかいない免許制の業界のため安定的な利益を出せています。
KDDIやソフトバンクと比べたときの競争優位や、楽天の参入の影響についてはまだ考えません。NVNOの影響についても。日が暮れてしまいますので。
堀の深い事業、すなわち参入障壁が高く、独占的地位の会社であることは間違いないということが分かれば問題ありません。
そして最後。業界内でのポジションです。
キャリアといえばドコモというイメージがあるくらい、通信業においては存在感が強いです。
「1番手か、悪くても2番手だろう。3番手ということはないな」
そんな印象の方も多いのではないでしょうか?
それで結構です。
ですので合格とします。
詳しくはまだ調べません。
くどいようですが、もっと銘柄が絞られた段階で詳細な調査をやっていきます。
ここでは3番手以降の企業や、競合が多すぎて順位などないような業界の企業を切っていく、そんなざっくりとした対処で問題ありません。
ここまで遅くとも2分くらいで判断したいところです。
逆に言うと、2分で判断できる基準にするべきです。
それでは次の企業に移りましょう。
次はJTです。
まずは業種からです。
「食料品」ですが、JTといえばなんといってもタバコ業ですね。
国内で唯一タバコの製造・販売が許されている独占企業です。
当然、堀がとても深い(参入障壁が高い)事業です。
合格とします。
次いで業績のトレンドです。
売上・利益ともにアップダウンがあり、それを反映してEPSやBPSもデコボコしています。
ということで、ここで不合格としました。
え!?そんなすぐに切っちゃって良いの?天下の大企業だよ?
そういう声も聞こえてきそうですが、良いのです。
理由は2つ。
- ここで定性的な判断(業績不振の理由)をしようとすると時間がかかってしまう
- 投資したいような素晴らしい企業は後に待っているはずなので、今微妙な企業に構っている時間はない
くれぐれも時間をロスしないように進めることが肝要です。
そういう感じでこの後もずずいっと見ていきます。
結局、良さそうに思える銘柄が20社残るのか、5社しか残らなかったとなるかはやってみないとわかりませんし、答えもないのですが、個人的には目安としてロングリストの10~20%くらいの社数が残ったら良いスクリーニングだったのではないかと思います。
今回、仮に下記の13社が残ったとします。
気になった企業のティッカーをメモしておいて、左ナビの「企業比較」機能を使って並べました。
その結果がこちらです。
※これはあくまで絞り込みの一例です。これらの企業のパフォーマンスについて意見を表明しているものではありません。
さらに分析して絞ろう
ここまで絞れたらショートリストまであとひと踏ん張りです♪
せいぜい10数社なので、上から順に詳しく調べていきましょう。
チェックするのは下記の項目です。
- 3年分の決算説明会資料(会社HPから)
- 会社HPで事業内容や商品説明
- ネットで評判を調査(アマゾンや価格.comのレビュー、智恵袋など)
- 製品やサービスを実際に体験(店舗へ行ったり、買ってみたり)
- 同業他社と財務データを見比べる
などです。
これまでは駆け足でしたが、ここからは是非時間をかけたいところです。
納得いくまで調べることが肝要です。
バフェットは「突然株価が半分になったとして、あせって手放してしまうようでは、納得いくまで調べられたとはいえません」と語っています。
今回は、
- 競合他社の方が、圧倒的に強みがある
- 来期以降の業績が芳しくなさそう
- 実際に商品を買おうとしたが、欲しいと思えなかった
などの理由から、最終的に半分の6社まで絞られたとします。
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アタックリストの作成
さて、最後のステップでアタックリストを作成します。
すでに6社程度に絞られていますが、さらに絞る理由はなんでしょう?
勘の鋭い方は気づいていらっしゃると思いますが、そうです、ここまで割安かどうかの判断をしていませんでしたね。
最初のスクリーニングではPERが30倍以下と、ゆるい条件をつけただけでした。
ショートリストまでは素晴らしい企業を選んできましたが、それが今すぐ買える状態かどうかは話が別です。
どれだけ持続的競争優位を持った素晴らしい企業であったとしても、割高で買ってしまったなら意味がありません。
そこで、ショートリストで選ばれた銘柄から割安なものだけを抜き出したのが実際に購入する(=アタックする)リストということになります。
ここで選ばれなかった銘柄(=割高と判定した銘柄)も日々ウォッチしておき、いざ割安の圏内に入ったら即座に買える準備をしておきます。
ということで、アタックリストのチェックリストはこちらです。
- 競合他社の水準からみて、PERやPBRなどの株価指標が割安と判断できるか
- 過去の推移からみて、PERやPBRが割安と判断できるか
イエスならアタックリスト入り、ノーならウォッチリスト入りということになります。
最後に
スクリーニングの方法論、いかがだったでしょうか?
微妙な違いはあるものの、これは外資系投資銀行がクライアントにM&Aの提案をする際に上場企業をスクリーニングする手法と同じ流れです。
「買収と小額投資は考え方がぜんぜん違うんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、買収だろうと企業の一部を取得することだろうと同じことだ、というのがバフェットの考え方です。
なかなか上手に効率的にスクリーニングができないとお悩みの方にとってお役に立てれば幸いです。
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